お金を持ってる/お金がない私立中学(その1)
実家は「太い」が一番
かのチャールズ・ダーウィンはケンブリッジ大学を卒業した後,5年間にわたる航海に出て,野生動物の標本を数多く集めました.この経験が後に著書『種の起源』で主張されることになる「自然選択」(natural selection)というアイデアに繋がったわけです.このアイデアは今日でも生物学の根幹をなす重要な考え方です.
なぜダーウィンが大学を出た後,定職にも就かずフラフラとできたのかといえば,それは…実家が裕福だったからです(ネットスラングで言うところの「実家が太い」というやつです).父親は著名な投資家であり,母方の祖父は高級陶磁器メーカーのWedgewoodの創業者です.納戸の奥にしまわれてる引き出物のあれです.ダーウィンの実家が太かったからこそ,進化論は生まれたのかもしれません.因みに優生学の父,フランシス・ゴルトンはダーウィンの従兄弟で当然金持ちです.
学者に限らず,芸術家でもなんでも「実家が太い」ほうが有利です.オノヨーコが心置きなく全裸で前衛芸術家として活動できていたのも,新海誠がイカ臭い映画を作り続けられたのも,実家が太かったからに他なりません.
私立中学校の経営の大変さ
私立中学・高校の経営というのも想像してみるとなかなか大変なものです.仮にですが1学年300人の生徒が6学年いて,年間80万円の授業料を納めていたとします.
- 授業料収入は年間15億程度です.
- これに補助金やら私学助成やらなんやらが入ってもせいぜい20億.
- 多分8億円以上が人件費に消えます.
- 10億弱が設備投資やら修繕費やら入試広報やらで消えます.
- 残るは2億円ほど.
この2億は儲けではなく,貯めておかなければなりません.なぜならそれを積み立てておかないと校舎の建て替え(なんだかんだで1棟15億ぐらいはするでしょう)も耐震工事もグラウンドの整備も出来なくなってしまうからです.少子化の今,赤字とまは行かないまでも,将来のための積立が疎かになっている私立中高は多いと思います.
ついつい僕らは,「偏差値」だけで私立中学を評価しがちですが,やはり安定した経営ができない私立中学は,先行投資が出来ないため先細りになってしまいます.実は計画父さんが受験した30年前から大きく偏差値を落としている学校の多くは,「実家が細そう」な学校が多いのです(どことは言いませんがカトリック系はおしなべて「細そう」です).逆に実家が太いところは伸びているように思います.
私立中学において「実家が太い」とは
娘の結婚相手の実家が貧乏でも別に気にはしませんが,娘を入学させる中学については,これから没落が予想されるとこよりは「実家が太い」ところに入れたいというのが親の心情というものです.
私立中学における「実家」というのはだいたい下の4つではないかなと思います.
- 宗教法人(例えば六甲中学の場合はイエズス会です)
- 同じ学校法人の学校(例えば西大和学園の場合は大和大学・白鳳短大です)
- サポーター企業(海陽学園のトヨタや成蹊の三菱や大同大学の大同特殊鋼などです)
- 国会議員とその取り巻きの政治力(近大の世耕一族とか西大和の田野瀬一族とかです)
では次回はまず宗教法人から考えてみよう.
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